「緊張しないでね」
試合の朝、つい言ってしまう言葉です。私も言っていました。
でも、この一言はいちばん効きません。むしろ緊張を強くします。
先日、小学1年生から6年生までを預かって、全国大会に行ってきました。親が一人もいない状態で、緊張している子に何を言うかをずっと考えていた立場から書きます。
結論:緊張は、止めなくていい
子供たちに最初に伝えたのは、これでした。
「前日から緊張するものだと思いなさい」
緊張しないようにしよう、と思わなくていい。そう言われる方が、かえって緊張します。
それどころか「緊張して、思い通りにならないと思っておきなさい」とまで伝えました。
「緊張するな」が逆効果になる理由
緊張しないと思っている子ほど、当日どうしようもなくなります。
「体が動かない」「思っていたのと違う」。想定していないことが起きると、そこで頭が真っ白になります。
先に「緊張するものだ」と分かっていれば、当日ドキドキしても「ああ、これのことか」で済みます。同じ緊張でも、意味がまったく変わります。
緊張を消そうとするのではなく、緊張したまま動ける状態を作る。そのほうが現実的です。
そのうえで、「やってきたことを思いっきり出しなさい」「最後まで投げ出さずにやりぬきなさい」と伝えました。
試合前、親がかけるといい言葉
全国大会には、いろいろな家庭の子が集まります。見ていて共通していたのは、伸びている子の親ほど、当日は多くを言わないということでした。
「楽しんで!」で十分です
会場でかける言葉は、これで足ります。
逆に、直前まで動きの確認をさせたり、細かく言い続けたりするのは避けたいところです。
子供は自分で成長しようとしています。そこに親が入りすぎると、プレッシャーになるか、甘えになるか、どちらかになります。
伝えたいことは、前日までに終わらせる
言いたいことがあるなら、当日ではなく前日までに言ってください。
当日は、送り出すだけの日です。
試合のあと、かける言葉の順番
ここがいちばん大事です。自分の子が同じ立場になったら、私はこの順番で声をかけます。
- ① まず、何にしても褒める
- ② 「昨日の自分より、できるようになってた?」と聞く
- ③ 「どんな挑戦をして、どんな失敗をした?」と聞く
勝ったか負けたかは、最初に聞きません。
比べる相手は、他人ではなく過去の自分
兄弟でも、チームメイトでも、比べた瞬間に子供は苦しくなります。
比べるのは、過去の自分です。昨日よりできていれば、他の子より劣っていても問題ありません。子供はそうやって伸びていきます。
挑戦しないと、失敗はできない
失敗の話を聞くのは、責めるためではありません。
挑戦しないと、失敗はできません。そしてたくさん失敗しないと、成功もしません。
失敗は、間違いではないということを伝えたいです。
負けたとき、勝ったとき
負けた直後に聞くこと
「自分の力を出しきれた?」
勝負事なので、どうしても勝ち負けはつきます。そこは変えられません。
変えられるのは、100%の力を出せたかどうかだけです。私はそこだけを聞きます。
勝ったときこそ、言っておきたいこと
勝ったときは、喜ばせて終わりにしません。
「君たちが勝ったということは、相手は負けたということ」
「君たちが勝って喜んでいるとき、相手は負けて泣いている」
「勝ったということは、勝った責任がある」。周りからもそう見られます。それを分かって行動しなさい、と伝えました。
厳しく聞こえるかもしれませんが、勝ったときにしか教えられないことです。
結果が出なくても、伸びる子はいます
今回、試合に出ずベンチにいた子でも、行動が変わった子がいました。
目立つ活躍はしなかったけれど、縁の下で力を発揮した子もいます。いつもは点を取らない子が、すごい力を出したこともありました。
勝った負けたではなく、そこで「きっかけ」を見つけられたかどうかで、そのあとの伸びが変わります。
勝って学ぶこともあれば、負けて学ぶこともあります。どちらも同じくらい大事です。
会場で、親がやってしまいがちなこと
- 細かく指示を出し続ける:子供は聞いているようで、頭がいっぱいになります
- 他の子と比べる:「あの子はできてるのに」は、いちばん響きません
- 結果だけを最初に聞く:話す気持ちがそこで止まります
- 見に行けないことを気にしすぎる:来る来ないより、普段の関わりのほうが子供に伝わっています
最後の点は補足させてください。見に来られない家庭でも、普段から送り迎えをして応援していれば、子供はちゃんと感じています。当日いなかったことを責める子は、私が見てきた中にはいませんでした。
よくある質問
Q. 前日、子供が眠れないと言います
「眠れなくても大丈夫」と伝えてあげてください。眠らなきゃと思うほど眠れなくなります。横になって目を閉じているだけでも体は休まります。
Q. 泣いてしまった子には何と言えばいいですか
その場で話を詰めないほうがいいです。泣いているうちは何も入りません。落ち着いてから、上の①②③の順番で聞いてあげてください。
Q. 「もうやめたい」と言われました
試合直後の言葉は、そのまま受け取らなくて大丈夫です。数日たってから、もう一度聞いてみてください。それでも同じことを言うなら、そこで初めて話し合う場面です。
Q. 緊張しない子は、それでいいのですか
低学年ほど、緊張より楽しさが勝ちます。それは悪いことではありません。無理に緊張感を持たせる必要はないです。
まとめ
- 緊張は止めなくていい。「緊張するものだ」と先に伝えておく
- 当日にかける言葉は「楽しんで!」で足りる
- 終わったあとは①褒める→②昨日の自分と比べる→③挑戦と失敗を聞く
- 比べるのは他人ではなく、過去の自分
- 挑戦しないと失敗はできない。失敗は間違いではない
- 勝ったときこそ「勝った責任」を教える
試合は、勝ち負けを決める日であると同時に、親子の会話が変わる日でもあります。かける言葉を少し変えるだけで、子供の受け取り方は変わります。

