「選手コースに誘われたけど、どうしよう」
スイミングスクールに通わせていると、ある日ふいにコーチから声をかけられることがあります。うれしい反面、練習量も費用も一気に増えると聞いて、迷う方がとても多いです。
現役のスイミングコーチとして、選手コースも指導している立場から、正直に書きます。
まず知ってほしい、たった一つのこと
迷っている方に、いちばん最初に伝えたいのはこれです。
誘われている時点で、コーチから見て「何か」があります。
お世辞でも、人数合わせでもありません。理由があるから声をかけています。
スイミングは、他の習い事と決定的に違います
ここが、あまり知られていないところです。
サッカー、野球、バスケットボール、バレーボール。ほかの競技は、その競技の試合に出るために習い始めるのがほとんどです。
試合に出たいわけじゃないのにやっている子は、まずいません。
でもスイミングは特殊です。
試合に出たいから通っている人のほうが、少ないのです。
泳げるようになってほしい。体を強くしたい。命を守るため。通う理由はさまざまで、そのほとんどは「大会」を目指していません。
その中で、コーチのほうから誘ってでもやってほしいと言うのは、それなりの理由があるということです。
向き・不向きはあります。でも、そこで決めないでください
正直に言えば、向き不向きはあります。
- センスや才能の部分
- 精神面や性格の部分
- 体格や骨格の部分
ただ、向いているか向いていないかだけで判断しないほうがいいと思っています。
やってみないと分からないことが、本当にたくさんあります。
実際、どれくらい練習が増えるのか
いちばん気になるところだと思います。クラブによって差はありますが、目安はこのくらいです。
- 低学年(初級クラス)…週3〜4回
- 高学年(上級クラス)…週5〜6回。それ以上のところもあります
週1回から週3回になる、というのは生活が変わるレベルの変化です。ここは家庭でよく話し合ってください。
費用は、倍近くになることもあります
こちらも正直に書きます。
費用が上がるのは間違いありません。倍近くになることもあります。
ただ、練習の回数も、時間も、質も倍増します。そう考えれば当たり前の金額です。
親の負担は、実際どれくらい増えるのか
心配されるのは、だいたいこの2つです。
- 送迎
- 費用
レベルが上がるほど遠征も増えます。それに伴って、送迎の回数も増える可能性があります。
ただし、スクールによっては送迎バスが使えます。公共の電車やバスで通えるようになる子も多いです。
大会の付き添いは、基本的に必要ありません
ここは誤解されがちなので、はっきり書いておきます。
大会への付き添いは、基本的に必要ありません。
「毎回の大会に親が一日中つきそう」と思って躊躇している方がいますが、そこは心配しなくて大丈夫です。
どの競技でも同じです
スイミングだけが特別にお金がかかるわけではありません。
どの競技でも、レベルが上がって大きな大会に出るようになれば、お金はかかりますし、送迎も必然的に増えます。
大変さはあります。そのうえで、いちばん大事なのはここだと思っています。
何のために、誰のためにやっているのか。
育成コースと選手コースは、何が違うのか
いちばんの違いは、レベルです。
育成コースに入って、選手コースを目指して頑張る。条件を満たしたら選手コースに上がる、という流れが一般的です。クラブによっては標準記録や成績でランク分けをしているところもあります。
ただ、育成コースは「選手コースまでの通り道」ではありません。
- きついことに慣れる
- 頑張ることを覚える
- 耐えることを学ぶ
ここで身につくものは、選手コースに行かなかったとしても残ります。
入る前に、家庭で確認しておきたいこと
確認しておきたいのは、この3つです。
- お金の面…続けられる金額か
- 送迎や協力体制の面…家族で回せるか
- 本人の本気度…いちばん大事なところ
ただし、やっていかないと分からない部分、やっていくうちに分かる部分がたくさんあります。
最初から「オリンピックに出たい」という選手も、なかなかいません。
だから、こう思っています。
最初から本気すぎないほうが、いいのかもしれません。
全部決めてから始めなくて大丈夫です。その都度、話し合っていけばいいと思います。
選手コースをやめてしまう子の理由
ここは、いちばん伝えたいところです。
やめてしまういちばん多い理由は、実力でも、練習のきつさでもありません。
保護者が、結果を求めすぎることです。
保護者優位になると、これが起きます。すぐに成果が出ないと、違う競技に移らせたり、本人がやる気になりかけている芽を摘んでしまったり。
子供あっての保護者です。この形を忘れてはいけないと思っています。
もちろん、コーチとのトラブルや、他の選手とのトラブルでやめる子もいます。ただ、根っこにあるのは多くの場合こちらです。
続く家庭と辞める家庭の違いは、水泳が続く子・辞める子の違いにもまとめています。
学校の勉強との両立はどうなるのか
よく聞かれますが、実感としては逆です。
レベルが上がるほど、賢い子が多いです。
時間の使い方や、考え方が備わっているからだと思います。限られた時間でやるしかないので、自然と身につきます。
あとは、勉強するかどうか。ここは本人のやる気次第です。
はっきり言いますが、勉強する気がないのを競技のせいにするのは間違いです。
まとめ:迷っているなら、話を聞いてみてください
最後にもう一度書きます。
誘われている時点で、コーチから見て何かがあります。
スイミングは、試合に出たい人のほうが少ない習い事です。その中で声をかけられたということは、それだけの理由があります。
もちろん、お金も送迎も現実の問題です。無理をする必要はありません。
ただ、向いているかどうかで決めるのではなく、まず話を聞いてみてください。コーチが何を見て声をかけたのか、聞けば分かります。
そして始めるなら、最初から気負わずに。やっていくうちに分かることのほうが、ずっと多いです。
通う回数の考え方は子供のスイミングは週何回がいい?、始める年齢は子供のスイミング、何歳から始めるのがベスト?にまとめています。
よくある質問
Q. 誘われていませんが、自分から希望してもいいですか?
もちろん大丈夫です。コーチに「選手コースに興味がある」と伝えてみてください。今の段階でどうかを、正直に教えてくれるはずです。誘われるのを待つ必要はありません。
Q. 途中でやめてもいいですか?
いいと思います。最初から全部を決めて始める必要はありません。やっていくうちに分かることのほうが多いので、その都度、家庭で話し合って決めていけば大丈夫です。
Q. 練習が増えると、遊ぶ時間がなくなりませんか?
減るのは事実です。ただ、限られた時間でやりくりするので、時間の使い方が身につく子が多いです。実感として、レベルが上がるほど、学校の勉強も含めて上手に回せる子が増えます。
Q. 兄弟がいるので、送迎が回りません
スクールによっては送迎バスが利用できます。公共の電車やバスで自分で通えるようになる子も多いです。まずはスクールに、送迎の方法を確認してみてください。
Q. 泳ぐのは好きですが、試合を嫌がります
よくあることです。スイミングは、そもそも試合に出たい人のほうが少ない習い事です。ただ、「嫌がる」の中身はいろいろで、緊張がこわいのか、負けるのがこわいのか、周りの目が気になるのかで、対応が変わります。まずはコーチに相談してみてください。
Q. 費用が続けられるか不安です
無理をする必要はありません。ただ、費用は「今の額」だけでなく、レベルが上がったときにどうなるかも含めて聞いておくと安心です。遠征費なども含めて、事前にスクールへ確認してみてください。

